公務員・教員

学生消防隊で学んだ厳しさと過酷さ。
「人の命を救う」という強い使命感を胸に、救助隊の道へ。

大阪市消防局 合格谷岡 悠 さんYu Tanioka法学部法律学科卒(2021年3月) / 高知県立 高知南高校 出身

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大阪市消防局の採用試験合格、おめでとうございます。
消防官を志したきっかけについてお聞かせください。

ありがとうございます。
消防官を意識し始めたきっかけは、小学校6年生の時に経験した東日本大震災にあります。テレビを通してですが、救助に取り組む消防官の姿を初めて目にしたことで、「自分たちの日常は、こういう方々に守られているんだ」と実感し、強い憧れを抱きました。高校3年生になって、将来の進路を考えた際、経法大の法学部の「公務員コース」に消防官モデルがあることを知り、「この大学に入れば憧れを現実にできるかもしれない」と思い、進学を決意しました。
また、大学1年生の時にも、消防官への想いをさらに強くする出来事がありました。ある日、自宅の前にあった家が全焼するという大きな火災が発生したんです。実際の火災現場に遭遇したのは初めてだったので、正直恐怖を感じました。そんな過酷な現場でも懸命に消火活動に取り組む消防官の姿を目の当たりにし、「絶対にこの職業に就くんだ!」と胸を熱くしたのを覚えています。

消防官を目指す上で、大学ではどのような学修に取り組みましたか?

1年生から「Sコース(特修講座)」で、公務員試験に関する学修を進めていきました。高校までの勉強とは内容もレベルも異なるため、基礎から丁寧に教えてもらえるSコースは、公務員試験に立ち向かうための土台づくりになったと感じています。ただ個人的には、「もっともっと勉強しないと合格できない」という焦りがあったので、3年生からは外部の予備校にも通って勉強量を増やすことにしました。
また、正課の授業では、自分が志望する消防局の体制や取り組みを調べて発表する「公務員特別演習」にも力を入れました。自治体の活動についても研究することで、消防と行政の関係性についても知ることができ、より多角的に消防を捉えることができるようになったと思います。さらに、他の学生たちの発表を聞き、改めて感じたのは大阪市消防局のスケールの大きさでした。大阪市消防局は西日本最大の規模を誇るだけあって、他府県への出動はもちろん、大規模災害時には緊急消防援助隊として幅広く派遣されることもあります。活躍できるフィールドが広いということは、それだけ多くの人命を救えるということ。私が地元の消防局ではなく、大阪市消防局を志望した理由もここにあります。

学生消防隊「SAFETY」にも参加されていますね。

はい。本当は1年生から参加したかったのですが、入学当初は大学の学修に慣れることに必死で参加する余裕がなく、2年生になってようやく参加することができました。「SAFETY」の主な活動内容は、八尾市消防本部の方々と一緒に地域の防災訓練や救急訓練に参加して、AEDの扱い方や簡易担架の作り方などを住民の方々にレクチャーすることです。最初はうまく説明ができず、悪戦苦闘していたのですが、隊長を務めていた友人から対処法を聞いたり、消防官の方々に積極的にご指導いただいたりする中で、実践的な知識を着実に修得することができました。また、消防官からリアルな現場の話を聞かせていただき、職務の厳しさの一端を学べた点も「SAFETY」の醍醐味だと感じました。
なかでも印象に残っているのが、消火訓練でのこと。水を通した消火ホースは非常に重く、注水姿勢を維持するのはとても疲れる作業です。慣れない私はすぐに疲れてしまいましたが、実際の現場ではどのくらいの時間をかけて消火活動を行うのか疑問に思い、お聞きしてみました。すると、消防官の方が平然と、「長い時は5〜6時間かかるよ」と答えられました。現場の厳しさを改めて痛感しましたね。

大学生活で印象に残っていることはありますか?

「SAFETY」スタッフとして、台風被害のボランティア活動に参加したことが一番印象に残っています。土砂崩れで発生した瓦礫の撤去をはじめ、浸水した家屋から畳や家具を運び出す作業をお手伝いさせていただきました。災害現場に入るのはこの時が初めてでしたが、想像と現実との差に驚かされたのを覚えています。そこには、テレビ画面からは決して見えてこない、現場の生々しさ、過酷さ、さらに住民の方々の疲労困憊する姿がありました。実際に自宅が半壊してしまった方ともお話をし、被災後も続いていく日常の大変さを肌で感じました。
一方で、大変な状況下にもかかわらず、私たちに「わざわざ、ありがとう」と感謝の言葉をかけてくださる方や、おにぎりを持ってきてくださる方までいて、人の温もりを身に沁みて感じました。これまでは漠然と「救助隊に入って人を助けたい」と思うだけでしたが、この経験を経て「助けたい命」を具体的にイメージできるようになり、人命救助に対する使命感がより強固なものになりました。

本番の試験に向けて、どのような準備をされましたか?

論文に苦手意識を持っていたので、採用試験の半年前くらいからSコースで出された論文の課題や過去問にひらすら取り組みました。必ず毎日1枚は論文を書くようにして、ある程度の枚数がたまったら先生に添削していただくという日々の繰り返しでしたね。合計すると100枚近くの論文を書いたと思います。コツコツ努力を積み重ねた結果、自分なりの形式をつくることができ、実力がついたことを実感できました。
また、面接の練習にも早期から取り組みました。さまざまなタイプの面接を練習しましたが、個人面接の練習は友人が見守っている中で行うため、本番に近い緊張感の中で練習に励めたのが良かったです。練習当初は、自身の考えをうまくまとめて話すことができませんでしたが、その要因のひとつは消防に関する知識不足だと気づきました。それからは授業でも貪欲に知識を吸収するように心掛け、受け答えの引き出しを増やしていきました。本番の試験直前の平日はほぼ毎日、公務就職支援室とキャリアセンターに通い、模擬面接をしていただきました。試験の日程が大学の夏期休暇と重なっていましたが、職員の方が快く練習に付き合ってくださったので、とても感謝しています。

本番の採用試験では、培ってきた力を発揮できましたか?

教養試験には自信を持って臨んだのですが、緊張からか実力を十分に発揮することができませんでした。試験が終わった瞬間、「ダメかもしれない」と思いましたね。ただ、自分の中では散々な出来でも、結果としては合格していたので「自分が積み重ねてきたことに間違いはなかったんだ」と思うことができました。反対に後日実施された論文試験は、ずっと対策してきた成果を発揮することができたと感じるほど、手応えは十分でした。
続く2次試験の個別面接は、前日までの緊張が嘘のようになくなり、「ここまで来たら絶対に受かってやる」という気持ちで臨むことができました。少し想定外の質問もありましたが、全体的には質問にもスムーズに答えることができ、自信を持って試験を終えられました。
しかし、合格発表の前日は怖くて眠れませんでした。朝方まで眠ることができず、少し眠っても1時間おきに目が覚めてしまうほど。そんな状態で合格発表の時間を迎えたので、合格者受験番号一覧に自分の受験番号を見つけた瞬間は喜びが爆発し、思わず涙まで溢れてきました。これまでの人生で最も嬉しい瞬間だったと思います。

今後の抱負についてお聞かせください。

消防学校では勉強面と体力面で厳しく鍛え上げられると思いますが、「将来、必ず救助隊に入るんだ」という気持ちを強く持ち、仲間と協力して乗り越えていきたいです。子どもの頃からずっと憧れてきた職業なので、どんなことがあっても挫けずに努力を続けていくつもりです。そして、救助隊に入ることができた暁には、より多くの人々を救助できる隊員になりたいと思っています。

受験生の皆さんへのメッセージ

消防への道は決して楽なものではありません。厳しいところでは採用枠が1人という場合もある狭き門です。私が消防官を目指していることを周囲に話した際、「絶対に無理だよ」と言われたり、鼻で笑われたりしたこともありました。それでも、あきらめずに努力し続けたことで合格という結果を得られたので、大学生活を通して「努力の継続」が最も重要だと実感しました。だから、消防官を目指している人も、それ以外の夢を追っている人も、大学時代はとにかく努力し続けてください。その時間は必ず、将来につながっていくはずです。

※掲載内容は取材当時のものです。

学生消防隊
「SAFETY」

八尾市消防本部との協定により、2016年7月、大阪府で初となる学生消防隊「SAFETY」が本学で発足されました。第一期のメンバーは、消防官や警察官をめざす学生を中心とする50名。八尾市消防本部の消防官による指導のもと、放水訓練や傷病者搬送訓練、AEDの使い方講習等に取り組み、八尾市消防本部の防災設備査察に同行するなど、積極的な防災支援活動を展開。地域防災に貢献するとともに、体験から学べる、実践的なキャリア教育の場となっています。

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